今後必要となる体制整備

Necessary system development in the future

今後必要となる体制整備

 国内外で、ヒト生体試料の研究利用体制の整備が急がれており、倫理・個人情報の管理、利活用システム、収集、保管、利活用・管理、クリニカルバイオリソース事業のマネージメント体制の強化は急務となっている。

 本院では、2014年より「がん」を対象としたバイオバンク(キャンサーバイオバンク)を稼働させ、現在までに約4,600例(2019年2月末日時点)のがん患者の血液や組織などを保管している。クリニカルバイオリソースの提供者への、その利用に関する説明とその同意の取得、試料の収集、搬送保管、搬出までの作業を行っている。さらに、健診センターである先制医療・生活習慣病研究センターからも、健常者の血液検体を収集しており、比較対象となるクリニカルバイオリソースを収集・保管する体制がある。このように国内のヒト生体試料の研究利用を全国に先がけてすすめてきた。

 一方、がん以外の診療科については、対象とする疾患が多岐にわたることにより、すべての疾患及び診療科に対応できる体制にはなっていない。また、最も臨床研究や医療開発に利活用されると期待できる手術標本からの新鮮凍結標本の系統的な収集体制についても1診療科のみ開始したばかりであり、手術検体の収集と管理を一元管理した体制の構築が、関連各科との連携のもと必須である。さらには作業のための保管スペースの確保、事故時に備えた収集試料のバックアップ体制の強化、保管機器の充実、そしてこれらの体制を維持管理する人材の確保と育成と事業全体のマネージメント、を支援する必要がある。

 また、これらのクリニカルバイオリソースに紐づく臨床情報を電子カルテなどの既存の情報と連携させることが効率的であることから、ICTを活用して診療機能(リアルワールドデータ)と連動した形で収集する体制の構築を強く推進する必要がある。

 さらに、ヒト試料の研究利用の発展を図るため、患者または健常者から提供された組織から作成する加工生体試料であるオルガノイド(3次元組織)は、増殖も可能であることから、様々な研究や医療開発に利用されることが期待されているが、高品質なオルガノイドを作成するためには、摘出後すみやかに処理する必要がある。ほかゲノム解析・オミックス解析などの研究促進のためにも(ISOなどの国際標準化に沿った)品質保証技術の支援・研究を推進する必要がある。

クリニカルバイオリソース共同研究開発講座との連携

 様々な特殊培養系と高度な解析技術により個々の症例の効果予測に役立つ革新的な薬剤感受性・耐性評価技術の開発を行うことを目的として、KBBMと共同して2018年4月1日に産学共同講座「クリニカルバイオリソース研究開発講座」を設置した。

 同講座では、センターのインフラを利用し、患者由来の高品質かつ詳細な臨床情報が紐づいたヒト生体試料由来のオルガノイド開発を行う。

 同講座におけるKBBMとの共同研究において生じた研究成果は、講座の運営委員会でその取扱いを定める。

臨床研究総合センターとの連携

 センターのインフラを活用し実施する臨床研究については、試験実施計画の作成から終了に至る各段階において、臨床研究総合センターと緊密な連携を行い、協同で実施体制を構築し、試験の効率化、被験者保護や安全性確保、試験データの品質管理・品質保証体制を推進する。人材に関しては、臨床研究総合センターと共同して効果的な人員配置を推進する。

 これらにより、単にクリニカルバイオリソースの利用権を企業に付与するのみでなく、ARO機能を最大限に活かして、クリニカルバイオリソースを活用した共同研究の総合的なコーディネートを目指す。

京都大学医学部附属病院 臨床研究総合センター

次世代医療・iPS細胞治療研究センター(Ki-CONNECT)との連携

 2020年4月に稼働する次世代医療・iPS細胞治療研究センター(Ki-CONNECT)において、がんをはじめとする難治性疾患、iPS細胞を用いた疾患領域に関する早期臨床開発を推進していくためには、前臨床試験といった早期の開発ステージから、ヒト生体試料による評価を行い、臨床試験に移行できる可能性の高い有望なシーズを探索しておくことが必要不可欠である。

 また、今後の医療はひとりひとりの体質や病態に合わせたPrecision Medicine(精密医療)の時代になると言われており、DNAを代表とした新しいゲノム(遺伝子)解析法が医療に応用され、成果を上げつつある。しかし、ゲノムだけでは限界があることが知られており、RNAや蛋白など複雑なメカニズムがその奥には潜んでいる。そのため、患者由来のヒト生体試料をex vivoで加工し評価することで、そのひとにあった医療を提供しようとする研究開発が加速している。さらに、現在の医療は既知のメカニズムに基づいた治療を実施しているが、実際のヒトではメカニズムが分からない現象もあり、このようなヒト由来の加工検体を用いた評価は、新しい医療を提供できる可能性がある。

 このため、高品質なヒト生体試料を収集、管理するセンターの機能は次世代医療・iPS細胞治療研究センター(Ki-CONNECT)運営においても極めて重要である。センターが保管・管理する本院の患者由来のヒト生体試料及び臨床データによる評価に加え、ニーズにあったヒト生体試料を様々な条件下で精密に収集し分析することで、他にはない特色ある研究実施体制の構築が可能となる。そのために、次世代医療・iPS細胞治療研究センター(Ki-CONNECT)内にセンターの一部を移転すること等で、十分に機能を活用できる体制を整備する。

次世代医療・iPS細胞治療研究センター(Ki-CONNECT)

株式会社KBBMとの連携

 KBBMは、京都大学と株式会社エスアールエル、株式会社椿本チエイン、シスメックス株式会社、株式会社アスクレップ、株式会社島津製作所、富士通株式会社及び株式会社SCREENホールディングスが共同出資して、それぞれの事業基盤を活用して高度先進医療に寄与する目的で設立された。①クリニカルバイオリソース事業を実施するセンターにおける生体試料保管・管理等の支援 ②センターに保管されている生体試料利活用の支援 ③ヒト生体試料を用いた加工検体(オルガノイドなど)の作成 ④生体試料を採取する臨床研究の調整を実施する。

 KBBMの設置目的は新薬創出等への寄与を通した社会貢献であり、センターとKBBMの密接な連携が事業目標達成に不可欠である。まずは早期に生体試料等に関する利用契約を締結し、外部利用の契約の迅速化を図り、利活用促進を目指す。

株式会社KBBM

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〒606-8507 京都市左京区聖護院川原町54
次世代医療・iPS細胞治療研究センター 2階

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