設立の背景

Background of establishment

設立の背景

 高品質なヒト生体試料・関連情報(クリニカルバイオリソース)により、アカデミアにおける臨床研究・医療開発の効率化を図り、成功確率を高め、早期に革新的医療を社会に提供することは、国民健康にとって極めて重要である。また、今後加速すると予想される、個々の症例の病態に合わせた医療”Precision Medicine (精密医療)”の提供に対応するためにも、クリニカルバイオリソースとその利用体制の整備は必要不可欠である。

 医療製品・機器・分析技術・サービス開発は、細胞や動物での評価段階である①創薬標的探索 ②シーズ探索 ③化合物探索 ④細胞での評価 ⑤動物実験を経て、ヒトでの評価段階である第Ⅰ相~第Ⅲ相臨床試験に至る。実験動物での評価段階からヒトでの評価段階の間には「死の谷」が横たわり、有望なシーズであっても新薬になるのは、20,000~25,000分の1である。また、臨床試験に入ったとしても8%しか新薬にならないとされる。さらに医薬品開発の場合は基礎研究からスタートし、薬事承認・上市まで9~17年の歳月を要し、開発費も高騰(1,000億~1,500億円以上。タフツ大学の試算によると2,800億円)している。これらの原因として、我が国では開発早期に、高精度な臨床情報が紐づいた高品質なクリニカルバイオリソースに十分にアクセスできず、非臨床の段階からヒト由来の生体試料での評価ができていないことが挙げられる。

 この課題を解決し、新規の薬剤や診断薬、医療機器などの研究開発の成功確率を高め、「死の谷」を埋めるために、クリニカルバイオリソースには以下の条件が求められている。

  1. 研究開発早期にアクセスができること。
  2. 正確な臨床情報・検診情報が付加され、かつ経時的に収集されていること。
  3. 採取・処理・保管に係る品質保証と管理がされていること。
  4. ニーズに合った安定的な供給が可能であること。

 しかしながら、クリニカルバイオリソースを収集・保管する施設である国内外のバイオバンクの現状に鑑みるに、十分な体制下で、試料の品質と付加された情報が管理されたリソースは少なく、かつ供給・提供体制は脆弱で、事業の持続可能性に課題が多い。我が国においては、上記の条件を満たすリソースを有するバイオバンク整備は十分とは言えない状況である。

このような背景から、上記の条件を充足した、臨床研究・医療製品・機器・分析技術・サービス開発利用に耐えうるクリニカルバイオリソース利用のインフラ・体制の整備が求められている。

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